FishTech - Photographs of Fishing Techniques −漁業技術の画像集「FishTech」−
by Emeritus Prof. Hiroshi Maeda, Fisheries College, Shimonoseki, Japan in collaboration with Asst. Prof. Koichi Fukada, Fisheries College, Shimonoseki, Japan
[著] 水産大学校名誉教授・理学博士 前田弘 [協力] 水産大学校助教授 深田耕一

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曳  縄



 曳縄は、一本釣に次ぐ少ない経費と小さな船で最も広い面をカバーできる漁法である。しかし、 線でしか有効でなく、線上の点で有効なのは一瞬でしかない。

 この特徴を生かしながら、次のように使われる:

(1) 主に黒潮に突出した岬付近―特に岬の潮蔭になる部分―においてカツオ・マグロ類を漁獲する。

(2) カツオ竿釣船では探魚の補助に使われる。

(3) シイラ旋網では、網で巻くのに十分な魚がシイラ漬けに集まっているかを探る。

(4) 地方によっては、季節的に短期間だけ来遊するブリやヨコワ(マグロの幼魚)を漁獲する。下関では毎年 秋になるとヨコワを追って和歌山県から曳縄船がきて、対馬海峡で操業する。その他にも、ブリが来遊してくると、 短期間急に多数の船がこの漁法に変わる。

(5) アメリカでは、レジャーボートによって広く使われ、北ではサケ・マス、南ではカツオ・マグロを漁獲する。 ほとんどのサケ流網漁船は漁場との往復中にこの漁法を用いる。

   現在の日本ではレジャーボートは航走だけと一本釣だけに分かれ、一部のレジャーボートしかこの漁法を 用いていない。もし航走しながら魚を獲る傾向が強くなるとすれば、この漁法が真っ先に取り入れられ、 漁業者との間にトラブルを起こすだろう。

(6) その他にも世界の各地で広く使われている。

   以上の記載によれば、曳縄は表層付近に分散するやや大型の魚を漁獲する漁法であるという印象を受ける。 しかし、これは表層魚類だけを対象とした漁法でない。錘を付けて海底付近を曳くブリ底曳縄が各地で知られていた。 これは季節的に行われており、写真は撮れなかった。重い錘を扱わなければならないので、 次第に廃れた。一部の地域では、タチウオも海底付近で曳縄によって漁獲される。駿河湾におけるその写真を示した。 同じような漁法が山口県の柳井付近でも行われる。同じようなは漁具を使っても、曳くことを確認できなかったので、 それは一本釣に含めた。しかし、曳縄的に使われる可能性は捨て切れない。

 曳縄は、簡単な漁法で、古くから世界各地で行われている。主に擬餌を曳くことは変わりない。しかし、 20・30年前から、その装置に変化が起こった。このフォールダはその変化とこの装置の多様性を示すことを 目的とする。

 曳縄に各地の小型船が用いられ、その船型は地方によって異なる。No.1からNo.3までは、宮崎県南郷と その付近における曳縄船の写真である。

2本の長い竿が曳縄の特徴である。No.1とNo.2では、機関室の前に立っているブルーの長い竿がそれである。 入港したときには、これは立ててある。しかし、曳き方が変わってきたので、倒して曳くと限らない。 No.1からNo.3まででは、この竿の真横に、これを倒したときに受止められるような支えがあるので水平に倒して 曳くことが分かる。

 No.1とNo.2に示した船は1人乗で、2週間近く操業を続ける。縄を曳くのは昼間だけで、夜間は休む。 左舷船尾近くの白い箱は清水タンクで、ここが炊事場になる。

 必要な漁労装置は2本の竿である。しかし、1人乗りであり安全確認のためにQRY通信を行うので、 そのためのアンテナと船位測定装置用のアンテナが見られる。

 漁獲物は船の中央にある船倉に入れ氷蔵して持って帰る。

No.1
[No.1: image12-15-001.jpg]

No.2
[No.2: image12-15-003.jpg]

No.3
[No.3: image12-15-005.jpg]

 No.4とNo.5は下関における曳縄船の写真である。短い期間だが、ほとんどすべての船がこのような装備をする。 これらでは、竿を倒したときには受け止められるようになっていない。また操業中も竿は立てたままか斜めまで倒し、 水平まで倒さない。

No.4
[No.4: image12-15-007.jpg]

No.5
[No.5: image12-15-009.jpg]

 No.6は和歌山県における曳縄船である。延縄と突棒も行うらしく、それらの設備が残っている。

No.6
[No.6: image12-15-011.jpg]

 曳縄に付ける最も普通の装置は、日本では潜行板である。それをNo.7に示した。

この写真の上に示したように曲面を上にして曳くと、擬餌は表面よりやや下の層を曳かれる。後端の黒いものは自転車のチューブの片で、左右に動かして潜行板のバランスを取る。魚が擬餌に飛びつくと反転して下に示したように平面が上になり、水面に現れるので、魚がかかったことが分かるとともに引き揚げやすくなる。

No.7
[No.7: image12-15-013.jpg]

擬餌は部品を買ってきて好みに応じて組立てられる。

No.8
[No.8: image12-15-015.jpg]

 以前には、潜行板は使う人の手作りか、好みに合った手作りのものを買っていた。しかし、専門メーカのものも 見られる。

No.9
[No.9: image12-15-017.jpg]

   No.10とNo.11は擬餌の部品である。以前には、主に鳥の羽・鹿の角・魚の皮・釣針のような部品が売られていたが、 次第に半製品が売られるようになった。No.10の下に示すように、スプーンや釣れた魚のショックを和らげる ウレタンゴムも売られている。

No.10
[No.10: image12-15-019.jpg]

No.11
[No.11: image12-15-021.jpg]

 潜行板に変わる新しい型のものが見られる。それらを示すことと、それらの出現によって操作法が変わって きたことを示すのが、このフォールダの目的の1つである。

 その典型的なものは「飛行機」と呼ばれる装置である。これにはNo.12に示すような既製品が見られるが、 それぞれに工夫をこらした手作りのものが見られる。使う道具を自分自身で作ることは、沿岸漁業―特に 釣漁業―に見られる一般的な習慣であったが、それさえも既製品を使うように変わってきた。これも近年に 見られる特徴である。

No.12
[No.12: image12-15-023.jpg]

No.13
[No.13: image12-15-025.jpg]

No.14
[No.14: image12-15-027.jpg]

No.15
[No.15: image12-15-029.jpg]

 これらを曳くテグスには、浮揚がらないように、小さな鉛の粒が多数ついている。

No.16
[No.16: image12-15-031.jpg]

No.17
[No.17: image12-15-033.jpg]

曳航される擬餌は、対象とする魚に応じて、魚やイカの型をしており、釣針は擬餌の後方につけられるか、 下方につけられるか、地方と対象魚種によって異なる。No.18の左上とNo.19には、かかった魚の衝撃を和らげる ウレタンゴムの紐が見られる。No.20では、釣針の代わりにイカ角のクラウンがついている。

No.18
[No.18: image12-15-035.jpg]

No.19
[No.19: image12-15-037.jpg]


No.20
[No.20: image12-15-039.jpg]

 新しい型の装置の中で、簡単で広く使われるものに「バクダン」と呼ばれるものがある。これは巾着網の浮子を 半分に切り、中心に棒を通し、回転しないように、切口の中心より下に小さな鉛を埋め込んで作られる。

 垂直に立てた竹竿の先端から曳索をとり、切口を前にして(No.21では左下、No.22では右下)これを曳くと、 抵抗のために竹竿はしない、それに耐えられなくなると戻るので、その後に曳かれている擬餌は水面を跳ねる。 この動きは餌を追う大型の魚から逃げる小魚の動きに似ていると考えられている。

 No.21は手作りのもの、No.22は既製品である。

No.21
[No.21: image12-15-041.jpg]

No.22
[No.22: image12-15-043.jpg]

 「バクダン」では極表層の魚を漁獲し、潜行板ではそれよりもやや深い層を遊泳する魚を漁獲するので、 1隻の船で両者を併用することがある。

No.23
[No.23: image12-15-045.jpg]

沿岸における曳縄の特殊なものとして、甲イカをねらうものがある。冬期の夕方に岸のすぐ近くの暗礁の上を 曳いて甲イカを漁獲する。短い竿から短い道糸を経て、擬餌を手漕ぎの船でゆっくりと曳くと、 下から甲イカが飛びつく。その擬餌と釣竿をNo.24とNo.25に示す。1つの組合で数名が短期間行う漁法であるが、 1人の漁師でNo.24に示すだけ多数の擬餌をもっていた。これらは大分県の例である。

No.24
[No.24: image12-15-047.jpg]

No.25
[No.25: image12-15-049.jpg]

 例外的な曳縄として、駿河湾で行われるタチウオ釣をあげる。水深50m以上にすむタチウオを狙ってNo.28に 示すような漁具に大きな錘をつけて曳く。No.26は船の主要部、No.27は船尾の拡大である。No.27には、 左舷船尾の隅に漁具とその後に錘が見られる。

No.26
[No.26: image12-15-051.jpg]

No.27
[No.27: image12-15-053.jpg]

 No.28に示すように、丈夫で長いテグスの先に30本以上の釣針が付いた漁具を用いる。釣針のクキは長く、 付け根には小さな鉛球がついており、それには小さなガラス玉が埋め込まれている。擬餌の代わりに濃い空色の ビニール片がつけられる。

No.28
[No.28: image12-15-055.jpg]

「飛行機の」変形として長さ1mに及ぶ大型の「ジャンボ」と呼ばれるものがある。「ジャンボ」は海面を曳かれる。 No.29は「ジャンボ」の下の面の写真である。

No.29
[No.29: image12-15-057.jpg]

「ジャンボ」の操業写真を示す。これは「飛行機」を大型にしただけのように見えるが、この装置と擬餌は空中に ある点で他の装置と全く異なる。

 他の装置は水面下にあるが、以下の写真に示すように、大きな「ジャンボ」は水面にある。竹竿の先から曳索をとり、 「ジャンボ」を曳くと「ジャンボ」は水しぶきをあげながら水面を走る。その抵抗で竹竿はしなり、 耐えられなくなるともとに戻る運動を繰り返す。竿の先から「ジャンボ」まで、水面の上を曳索が走る。 この曳索から、ときどき水面に触れるように何本かの大型のイカの型をした擬餌が降ろされる。これは、 後から大きな魚が追ってきたのでイカがときどき空中に飛び上がりながら逃げるのに似せてあるとのことである。

 No.30に曳かれる擬餌を示す。

No.30
[No.30: image12-15-059.jpg]

 曳縄で釣れた魚をイルカ等が奪いにくる。このラッパ部を水中に入れ、上端を叩いて追い払う。

No.31
[No.31: image12-15-061.jpg]

 減速した船から「ジャンボ」を繰り出す。

No.32
[No.32: image12-15-063.jpg]

No.33
[No.33: image12-15-065.jpg]

 1本の擬餌が見られる。

No.34
[No.34: image12-15-067.jpg]

 船尾から後方を向けて撮った写真である。はるか後方には、「ジャンボ」があげる水シブキが見られる。

No.35
[No.35: image12-15-069.jpg]

 曳索は細く、擬餌までは遠いので、200mm望遠レンズで撮影した写真でもこれらは分かりにくい。パソコンによって 拡大すると画像が荒れるが、曳索と擬餌は分かるようになる。No.36は200mm望遠レンズで撮った写真である。 No.37とNo.38は、その部分拡大である。No.36でも曳索と擬餌は分かるが、No.38ではもっと分かりやすい。 写真のほぼ中央付近の上から水平線のやや下までに曳索と海面から上がっている擬餌が写っている。

No.36
[No.36: image12-15-071.jpg]

No.37
[No.37: image12-15-073.jpg]

No.38
[No.38: image12-15-075.jpg]

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