FishTech - Photographs of Fishing Techniques −漁業技術の画像集「FishTech」−
by Emeritus Prof. Hiroshi Maeda, Fisheries College, Shimonoseki, Japan in collaboration with Asst. Prof. Koichi Fukada, Fisheries College, Shimonoseki, Japan
[著] 水産大学校名誉教授・理学博士 前田弘 [協力] 水産大学校助教授 深田耕一

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在来型の船曳網の操業
(和歌山県田辺市)



 シラス船曳網は、1970年代の半ばまで在来型が残っていた。これは網を積んだ2隻の無動力船と2隻から3隻の 小型動力船を使う漁法である。動力船2隻の場合は1隻が魚探を使って探魚に当たり、その間もう1隻は漁獲物を 陸まで運ぶ。魚群が見つかると1隻ずつの動力船が1隻ずつの網船を曳航して投網に当たる。3隻の場合は1隻が 探魚に専念し、1隻は漁獲物を陸まで運び、もう1隻は2隻の網船を曳航する。魚群が見つかると、この船と漁獲物を 陸まで運んだ船は1隻ずつの網船を曳航して投網に当たる。

 無動力船を使って大きな網を投網し、ほとんど人力だけで引揚げる。このような漁法は、日本や世界の昔から 漁業が盛んであった地方において見られる。

 日本では1970年代の半ばの数年間に一斉にドラム式に変わった。漁村における労働力の不足によってドラム化が 行われ、網の基本を残しながら、操作法は全く変わった例としてあげる。また、これは伝統的な技術の集積の例 としての意味もある。

No.1
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No.2
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 No.1とNo.2は網船の写真である。後から機関を備えたが、それは揚網の補助のためで、推進には使わない。 No.1ではボールホーラを吊ったガントリーと船尾にネットホーラ、No.2ではボールホーラを吊ったダビットと 動力キャプスタンが見られる。

 漁船登録番号のWK4は和歌山県籍の5トン以上の無動力船を意味する。

 網はこの大きさの船2隻に積載できる限度に近い大きさである。

投 網

No.3
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 漁獲物(シラス)は傷みやすいので、水揚げ後直ちに陸まで運ばれ、生のままか、あるいは釜茹でから シラス干しまでに加工して販売される。

 これは漁獲物を陸まで運び、漁場にもどってくる船の写真である。

No.4
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 水平線近くのやや右寄りに探魚中の動力船が見られる。1隻の動力船が2隻の網船を曳航して探魚中の船に近づく。

No.5
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 動力船もかなり古い和船型である。手前の無動力船(網船)にはキャプスタンが見られる(手前の船の右舷 船首近く)。これは網に向かって右側で網を揚げる船である。

 2本の曳航索が動力船からでている。動力船の右舷中央には魚探のトランスデューサを引揚げてある。

No.6
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No.7
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 2隻に分けて搭載された網は出港直前に縫合される。2隻の網船は舫ったままで曳航される。

 No.6では長い曳綱があり、網の部分によって大きな目合いの網地からモジ網までに分かれていることが分かる。

 No.5では2本の曳索で曳航していたが、これらでは2隻を舫ったまま1本の曳索で曳航している。いずれにしても、 舫ったままで縫合わせた網を載せてある程度以上の速度で曳航するには、細心の注意と熟練が必要である。

 以後の写真から、乗組員数と年齢が推定できる。すなわち、この漁業は漁村における老人が限られた漁期に 行う漁業である。

No.8
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No.9
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(右側の網船を曳航する動力船から撮影)

 投網開始地点に到着すると、大きな浮子(写真では黒とオレンジ色)がついた袋網が投入される。袋網を 入終わるまで直進し、次いで左右に大きく開き曳航されながら身網を投入する。

No.10
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(網の左半分を投入する船から右半分を投入している船を撮影)

 身網部の投入 乗組員の間の船尾付近に浮子綱を引揚げるためのキャプスタンが見られる。漁船登録番号の WK5は和歌山県籍の5トン未満の無動力船を意味する。

No.11
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 長い袖網と曳綱を投入し、最後に2隻の網船が近づいて投網が終わる。2隻の網船の舳が舫われると曳航していた 動力船は離れる。

No.12
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(網の左半分を投入する船から右半分を投入する船を撮影)

 2隻の網船が左右に分かれ、身網を投入している。

 

No.13
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No.14
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 投網を終わった網  (浮子は身網付近だけに見られる)

揚  網

No.15
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No.16
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 シラスを漁獲する網であるが、袖網の部分の網目は50cm以上であり、網というよりもロープにしか見えない。 ロープトロールと同じ考え方が、このときすでに用いられていた。

   以後の写真では、袋網に近づくに従って目合いが小さくなって行くことが分かる。このように袖網付近を 大きな目合いの網で作り、次第に小さな目合いにすると、限られた材料で大きな網を作り、限られた力でその網を 動かせる。また、推進力によって網を曳くよりも、船を錨で固定して曳寄せる方が限られた力で大きな網を曳ける。 この考え方は日本や世界各地の古い底曳網(かけまわし)に見られる。このように一見時代遅れのような漁法でも、 伝統的な知識の累積がいたるところに見られる。 

 No.15では、網を曳くときに船が曳込まれないように、網の反対の舷から錨を打ってあるのが分かる。 曳綱を曳いている。 No.16は袖網のはじめ近くを揚げている。

No.17
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No.18
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 袖網部

No.19
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 この段階まで揚がると浮子と沈子が分かる。まだ網目は大きい。

No.20
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 この段階まで揚がると、やっと網らしくなる。最も力のかかる浮子綱と沈子綱は動力プーリーで揚げられる。

No.21
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 浮子綱と沈子綱はキャプスタンか動力プーリーで引寄せられるが、網は人力で揚げられる。浮子(向かって右) と沈子(向かって左)が分かる。同じ部分でも、浮子側の網目は小さく、沈子側の網目は大きい。

No.22
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 この段階で、チリトリ型に突き出した腹網が上がってくる。袋網の上前縁にはヘッドロープが見られる。 これが揚がると魚は網で囲まれる。身網の背側は大きな目合いであるが、腹側は小さな目合いである。 シラスは初めて腹網から逃げられなくなる。

No.23
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No.24
[No.24: ft_image_16_12/image047.jpg]

 袋網はモジ網である。ここでしばらく網を止める。シラスとみなせない大きさまで成長した稚魚が混ざると 商品価値が下がる。

それらは水面近くで小さな群を作って泳ぐので、網の一部を水面下に下げて逃がす。

No.25
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 網の部分によって目合いが大きく異なることが分かる。

No.26
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 漁獲物の汲み取り

漁 具

No.27
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  網は著しく長く、右手前の曳綱から始まり、目合いの大きな袖網、奥から左に身網と袋網が見られる。

No.28
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 袋網は2重になり、内網(空色)の目合いはやや大きい。ここで流れ藻や大きな魚が漁獲物に混ざらないようにする。 漁獲物(シラス)は内網と外網の間に溜まる。

 内網には工業用のチャックがつく。これは網の横方向に開く。外網にも工業用のチャックがつく。 これは網の縦方向に開く。

 コッドエンドを縦に開けて漁獲物を取りだし、それを縫合わせて使う方法は、日本における伝統的な底曳網 でも見られた。

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