FishTech - Photographs of Fishing Techniques −漁業技術の画像集「FishTech」−
by Emeritus Prof. Hiroshi Maeda, Fisheries College, Shimonoseki, Japan in collaboration with Asst. Prof. Koichi Fukada, Fisheries College, Shimonoseki, Japan
[著] 水産大学校名誉教授・理学博士 前田弘 [協力] 水産大学校助教授 深田耕一

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トロール



 トロールは日本の水産業を支えてきた漁法であり、ことに大手水産会社が独占的に行う代表的な漁法の1つ であった。水産系の大学の練習船はトロール船を基本とした船型であり、トロールはマグロ延縄とともに実習に 組込まれてきた。それにもかかわらず、実際に稼動しているトロール船を見ることは全くなく、入港中の トロール船を見ることもさえほとんどなかった。これは、漁場が遠洋であり、トロール船が入港する港は限られ、 入港日数が短かかったためである。その写真が少ないのは、各社とも技術の粋を競っていたので、見学は 好まれなかったし、船橋や作業甲板写真は撮れなかったことによる。

 現在、トロール船に近い―あるいは外国ではトロール船とみなされる―基本構造の船は、沖合底曳船と 沿岸の底曳船に見られる。しかし、トロール船に分類される船は日本には数隻しか残っていない。かつての 重要性を考えると写真集の一部として揚げるのに十分でないが、集まった写真をここに示す。

No.1
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 第2次大戦直前に建造された日本最大(500トン)のディゼル・サイドトローラの模型である。当時は200トン から350トンのトロール船が主体で、スティーム(レシプロ)機関からディゼル機関に変わり始めた時代としては 画期的な船であった。

 サイドトローラの特徴として、右舷中央より投揚網するので乾舷は低い。左右非相称であり、右舷より撮ると サイドトロール船の特徴を捉えた写真を撮れる。

 甲板部員室は船首部にあり、後方に向かって魚倉・機関室・機関部員室が続く。士官居住区は船橋付近の 水線上に集まる。

 前のマストと煙突の位置の右舷側に逆U字型のギャロースがある。トロールウインチは士官居住区の前にあり、 これから2本のワープが前に走る。左舷のワープは前のギャロース、右舷のワープは後のギャロースを経て、 船尾(ほぼ推進器の位置)の右舷側にあるトウイングブロックで支えて曳かれる。網の力はこのトウイング ブロックにかかり、これは中心線上にない。右に旋回し、ローリングを利用して右舷中央付近から揚網する。

 漁獲物の選別と箱詰めは曳網中に甲板で行われる。

No.2
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No.3
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 5,000トン級スリミ工船の模型である。船室は船首付近の1/3と船橋付近の水線上に集まる。船橋には、 水中情報を集める装置・リアルタイムで船位を測定する電子装置・通信装置等の各種計器類が並ぶ。通常の 航海において前方を見ながら操船する設備と、投揚網中において後方の漁労甲板における作業を見ながら 操船する設備の2組がある。船橋より後方は、漁労甲板とその下の(漁獲物)処理甲板の2層よりなる。

 トロールウインチ(写真では緑色)は、船橋のすぐ後の漁労甲板にある。船橋の後方に2基の鳥居型マストを備え、 前のマストはミールプラントの煙突、後のマストは主機関の煙突を兼ねる。船尾にはスタンランプ (日本ではスリップウエーと呼ばれる。しかし、スリップウエーは捕鯨母船における構造で、トロール船では スタンランプと呼ぶべきである)があり、そこから投揚網される。

 漁労甲板上の作業の詳細は、「スリミ工船の試験操業」と「スリミ工船の漁法」に示した。

No.4
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No.5
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 1974年にアラスカ湾で出会った3,000トン級のトロール船の写真である。この船は底魚類を漁獲し、冷凍魚に 加工する(冷凍トロール船、freezer trawler)。

 網に関するテレメータ機器(ネットレコーダと呼ばれるが、これは商品名である)は網の行動と網口おける 反射物体の状況を知る重要な機器であり、普通では網を曳けないような窪み等に集まる魚群を狙い獲りする ようなスタントローラー独特の曳網法と、処理甲板に残っている魚の量とコッドエンドに入っている魚の 推定量によって揚網時間を設定するためには不可欠な機器である。しかし、当時はまだ曳航式の受波器を 使っていた。それを吊るすブームが左舷から出ている。スクリューカレントの影響を避けるために、 このブームはかなり長い。ちょうど水平線に写っている黄色の点が受波器である。

 右舷から風を受けて漂流している。ミールプラントからの排気が見られれば、それが風向きを示すので風向と 漂流方向の関係が分かるが、これらの写真では、それは分からない。

No.6
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 1973年にアリューシアン列島南斜面で出会った曳網中の3,000トン級の冷凍トロール船である。船尾からの波は 目立つが船首からは波があまり立っていないので、曳網中であることが分かる。注意すると、左舷のワープが ほぼ45°に下がっているのが分かる。この地点は水深約500mで、海底は荒い。このような海底の漁場ではワープ を比較的短くして曳網するので、曳網中のワープはこのような角度になる。

 この写真は水深約700mの地点で操業していた底延縄船から撮影した。このトロール船は、このような大陸棚 外縁付近の急斜面の上端付近で、等深線に沿って曳網していた。

 中央の鳥居型マストからの煙のように見えるのは、フィシッミールプラントからの排気である。

No.7
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No.8
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 1,500トン級の冷凍トロール船の写真である。これまでの写真の船に比べて、トロールウインチが目立つ。 これは写真を写した角度にもよるが、深い深度を狙って設計された可能性が考えられる。これまでの写真では、 一番前のマストは船橋の前にあった。しかし、この船では船橋とトロールウインチの間にある。この船では デリックが付いたマストは1基だけである。先に示した船では、デリックを付けたマストは2基か3基あり、 仲積船との間で2口荷役ができる。この船で2口荷役をするとすれば、ハッチは船橋とトロールウインチの間に1口と、 トロールウインチのすぐ後の1口を使うことになる。

 船橋は著しく前にあるが、それとトロールウインチとの間にハッチを設けたために、トロールウインチはほぼ 中央になる。これより後方の長さによって、使える網の長さと揚網の作業パターンが決まる。

 最も大きな違いは、煙突の有無だろう。船が停止して網を揚げはじめると、海中にある網がシーアンカーの ような作用をして、船は自動的に風を船尾から受けるように回頭する。すなわち、煙突が低いと、漁労甲板上で 作業をする人は主機関の排気を浴びることになる。

No.9
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 右は初航海に出港する準備中の5,000トン級のスリミ工船、左はやや古い3,000トン級の冷凍トロール船である。

No.10
[No.10: ft_image_17_11/image019.jpg]

 No.9において左側に写っている船の写真である。遠く、しかも背景が写っているので、拡大してもあまり はっきりした映像は得られない。しかし、スタンガントリーの形状・スタンランプと後部鳥居型マストとの位置の 関係がわかる。当時はこのような縦型曲面オッターボードを使っていた。

No.11
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No.12
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 No.9において右側に写っているスリミ工船の写真である。トロールウインチは前から約1/3の位置にあり、 長い網を使える。当然、荷役中には漁労作業はできないし、仲積船との洋上接舷は天候に左右され、短時間に すまさなければならない。3基の鳥居型マストはいずれも荷役用のブームを備えて、短時間に荷役ができるように なっている。

No.13
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 南氷洋でオキアミを漁獲するためのトロール船で、基本的には3,000トン級の冷凍トロール船である。

No.14
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 鳥居型マストの間には、ウインチコントロール室があり、総てのウインチ類は、ここから1人の熟練者によって 操作される。その後方(写真では手前)にトロールウインチがある。その大きさは付近の人と比べれば分かる。 トロールウインチの後方左舷付近とその後方の通風塔付近には、ロープトロールの網口に使われるロープが 置いてある。

 前方の鳥居型マストはミールプラントの煙突を兼ねる。

No.15
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No.16
[No.16: ft_image_17_11/image031.jpg]

 船尾の構造を示す。この時代には、直線に近い縦長のL字型の曲面オッターボードが使われていたが、 この船ではそれは使われていなかった。

 スタンランプの角度と後部鳥居型マストの位置の関係が分かり易い。

 後部の鳥居型マストは主機関の煙突を兼ねる。

 

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