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夜間操業の型には、東方地方以北で行われるサンマ棒受網と、暖かい沿岸において主に10トン以下の船を用いて
イワシ類とアジ類を狙う棒受網がある。サンマ棒受網漁船は、東北地方以北の大型船で代表されるが、もっと南
では沿岸漁船もこの漁業を行う。それらはいずれも漁獲する基本原理は変わらないが、従事する船の大きさと構造
が全く異なる。
No.2
No.3
No.4
No.5
No.6
No.7
No.8
No.9
No.10
No.11
No.1は左舷、No.2は右舷から見た写真である。斜めに立っている水色の構造は(水上)集魚灯の列(習慣的に
スズラン灯と呼ばれる)で、一本に1,000ワット電球が約20個ずつついている。その本数から1隻の照明の強さが
分かる。
漁場に到着すると、船首と船橋にあるサーチライトを点灯し、そのビームで海面を走査しながら微速で前進する。
サンマが海面直下にいるとシブキが上がる。十分なサンマを発見できそうだと判断されると停止し、集魚灯を
点灯し、サンマが集るのを待つ。
サンマの好漁場では、多数の漁船が集って点灯するので、その光景はイカ漁場と同様に人工衛星からも観察
されている。
探魚作業に用いるサーチライトに紺色の覆いをかけてあるのが、No.1とNo.2に見られる(背景と重なっているが、
注意すると分かる)。
海面に上がるシブキを目視で探すので、船橋(オレンジ色)の上には仮設の船橋(白色)があり、さらにその
上でも、見張りができるようになっている。アッパーブリッジで探魚する方式は、西日本では見られないが、
昼間操業をする東方地方の巻き網漁業の網船やカツオ竿釣船でも見られるので、この地方としては、珍しいもの
でない。
右舷のブルワークトップはほぼ直線である。左舷から網を揚げるので、そのブルワークトップは、船橋の前と
後で高さが異なる。しかし、ほぼ全長にわたってサイドホーラが連なる。網の最後は左舷中央部から揚げるので、
その部分のブルワークは一段低くなっている。なお、No.1の船首と船尾には乗組員が写っているので、それと
比べるとスズラン灯等の大きさが分かる。
海面直下を遊泳するサンマを対象とするので、巻き網漁船と異なり、水中探索用の電子機器は役立たない。
しかし、水温情報は漁場選択において大切なので、それを集める機器は多数装備されており、そのためと、
電子航法装置と通常通信の機器のために長いアンテナが多数見られる。
No.3によれば、スズラン灯1基についている電球の個数が分かる。また左舷から網を揚げる補助に用いたり、
漁獲物の荷役に用いられるデリックが見られる。
No.4では、浅い円筒型のフードの中には3kwの電球が数個あり、そのうちの1個か2個は赤色灯で、魚を網の上に
誘導し密集させるために使われる。
網には裾から揚げるために数本の索がある。No.5とNo.6は、それらを一斉に引揚げるための棒受網用のウインチ
を示す。
No.7は左舷の網を揚げる部分の拡大写真である。探魚のためのサーチライトと網を揚げるために使うデリック
システムを示す。
No.2とNo.5では、左舷がわのスズラン灯に並んで白い直立した構造が見られる。
No.8からNo.11までは、No.7までの写真の約20年後に撮影した写真である。船の基本構造は変わっていない。
これらの船はサンマ漁期中にも繋留してあったので、廃船になると考えられる。
No.14
No.15
No.16
右舷がわに網を入れる前に、集魚灯を左舷がわに遠ざけ、集った魚をそのまま船から遠ざける。中央に細くて
長い竿があり、これは、その作業に使われる。停泊地でも船の全長より長くて細い竿が立っている船が沿岸の
棒受網漁船である。No.14とNo.15ではこのことが分かる。
船の全長にほぼ等しい長さのFRP製の太い竿が2本左舷に置いてある。これらは左舷に沿って船首と船尾方向に
張出される。これによって船の全長の2倍以上の幅の網を扱える。以前は孟宗竹をT字型に組み、横棒に網を下げ、
縦棒によって船から押出された。棒受網の名は、この横棒に由来する。2本の孟宗竹を扇の骨のように広げ、その間に
網を張る方法もある。これらに比べると、はるかに大きな網を扱えるようになった。No.36からNo.45には、この両者が
見られる。
右舷がわに網を投入し、その中に魚を誘導する前に網を膨らませる。そのために、集魚を始める前に、左舷から
離してパラアンカか錨を打ち索を伸ばしておく。網を投入した後にこの索を引込むと船は左に動き、網は膨らむ。
右舷から風を受け、左舷がわに流れる潮流を受けるように操業する。少なくとも、網を投入後は風と潮流をこの
方向から受けるようにしなければならない。
No.16 ほとんどの船は一人乗りで、すべての操作を一人で行わなければならない。そのために、左舷の船首と船尾付近には張出竿引出し用のウインチと
右舷がわの中央機関室の(上)付近には網裾の索を引揚げるための棒受網用のウインチがある。右舷の船首付近と
船尾付近には小型のネットホーラがある。No.29には最新型の棒受網漁船が示される。また、No.46からNo.54に
示した写真と比べると最近20年間に起こった装備の変化が分かる。
No.19
No.20
No.21
No.22
No.18からNo.20までは、強力ストロボを用いて撮影した写真である。強力ストロボを使わなければ、No.21とNo.22に
示すように、作業灯の下の様子しか分からない。また、網を準備中の船でも左舷がわにはパラアンカや錨綱か
水中灯のある可能性があり、集った魚を散らすので、あまり近づけない。
操業時間のほとんどは集魚に当てられ、深夜以後の短時間内に網を扱うので、揚網中の写真は撮影しにくい。
したがって、揚網準備中の写真しか示せなかった。
No.18 船首がわの張出棒は張出してあるが、船尾の張出棒はまだ張出ていないし、まだ集魚灯を船から引き
離していない。船尾付近に2基の水中灯が点いている。水中灯は海面における反射がないので、光線は効率良く
水中に入る。したがって、かなり近寄ってもこの程度しか分からない。
船尾付近の緑がかった明かりが水面上から見た水中灯である。右舷がわには、まだ網を降していない。
マストとほぼ同じ高さに並ぶ小さな光点は、他船の水上灯と作業灯である。棒受網漁船と巻き網船団の灯船が
混ざっているが、灯船は水中灯を使用しているので、遠くから見ると薄暗く、かなり近づかなければ分からない。
漁場の縁辺では、水上灯を用いたイカの手釣が行われている。これは、この地方独特の漁法である。しかし、
これらの写真には写っていない。これらは、フォールダ「イカ釣漁業」に示した。
No.19 船尾の張出棒は伸ばしている。右舷に網を設置する前の、集魚灯を左舷に遠ざける準備中である。
No.20 船尾左舷がわに水中灯が見える。集魚灯を遠ざけるための竿は倒されている。しかし、集魚灯はまだ
遠ざけられていないし、右舷には網はまだ降ろされていない。
No.21 集魚中の写真である。船が離れていて、しかもストロボを用いなかったので、作業段階の詳細は分からない。
No.22 船はかなり大写しされているが、強力ストロボを使わなかったので、作業段階の詳細は分からない。
船尾に水中灯が見られる。
No.24
No.25
No.26
No.27
No.28
No.25からNo.27までは、棒受網を揚げる揚網機を示す。この程度の揚網機は地元で作られ、地方によって変化に
富む。棒受網用のウインチに次いで装備されたのが、揚網機である。
No.28とNo.29は棒受網漁船の写真である。No.29は萩市大島で1990年に見られた船で、当時のこの地方としては、
最新鋭の漁船とみなせる。拡大すると装備の詳細が分かる。
船首から船尾にかけて船の上に載せてあるのは、集魚灯を左舷に離すための竿である。左舷には、網を船首と
船尾に張出すための張出棒が見られる。網は右舷から引揚げるが、外海で操業するため、右舷側は低くない。
No.32
No.33
No.34
No.35
No.31 棒受網漁船に改装中の船団の全景を示す。
No.32 当時のこの大きさの船としては進んだ方で、鉄船である。本来の漁業の「かけまわし」漁業を行う冬期には
着氷するので、手摺もマストの支索もほとんどない。甲板上にはワーピングエンドの他には、ワープを処理し網を
揚げる設備はなかった。
集魚灯は1本のスズラン灯に12個、10本と、No.1からNo.7に示す船に比べてはるかに少ない。他船と競合するので、
集魚灯の数は増加したが、本来はこれでも十分だったのだろう。
船橋の上には探魚のための大きなサーチライト(オレンジ色のカバーがかかっている)が見られる。左舷に網を
設置した後に、網の中にサンマを誘導するための集魚灯の列が左舷に見られる。両方の舷にある集魚灯の数を比べると、
広範囲から魚を集めるときと、集った魚を誘導するときに必要な照度の差が分かる。現在に比べると集魚灯の数は
はるかに少ないが、通常行っている「かけまわし」漁業に比べて消費する電力ははるかに大きいので、機関室内に
増設した発電機からのキャプタイアの束が機関室の窓からでている。それでも電力が不足するので、陸上の工事用
の発電機を臨時に船尾に搭載するが、それはまだ見られない。
数ヶ月しか従事しない業種なので、スズラン灯を付けた以外、船体と甲板上の設備はほとんど改装されていない。
キャプタイアの束がでているやや後の機関室の上に、網裾を引揚げる棒受網用のウインチが見られる。他の漁業でも、
当時、網は人力によって揚げていた。したがって、現在では普通に使われているサイドホーラやネットホーラは
みられない。これらの写真が撮られた後の約20年間は、漁船の装備が急速に進歩した期間と考えられる。この間に
主機の高速・大馬力化、各種電子機器と油圧揚網機の普及が上げられる。No.1からNo.7までと、ここに示した写真
を比べると、このことが分かる。
No.33 同じく改装中の船の船尾を写した写真である。船尾の甲板には、陸上工事用の発電機が搭載されている。
No.34 改装中の船の船尾の拡大写真である。まだスズラン灯以外は装備されていない。釧路からオホーツク海まで
出漁すると考えられる鉄製の「かけまわし」漁船の船尾の構造を示す。当時、ワープは人力でコイルしていた。
「かけまわし」漁業における当時と現在の装備の違いはフォールダ「かけまわし」漁業を参照すると分かりやすい。
No.35 機関室内に増設した発電機からのキャプタイアの束が窓からでている。機関室の上に設置された棒受網用
のウインチの構造は分かりやすい。船尾甲板には陸上工事用の発電機(カバーをかけてある)が見られる。集魚灯は
裸なので、当時の集魚灯電球が分かる。
No.37
No.38
No.39
No.40
No.41
No.42
No.43
No.44
No.45
船橋の上にもう一層の操船設備のある船と、この地方における他業種の船とほとんど同じ型の船の両者がある。
この地方の棒受網は、東北地方における棒受網と異なり、あまり多数の集魚灯を用いない。この地方でも夏季に
沿岸においてイワシ類やアジ類を漁獲する棒受網漁船があり(No.46から
No.54までのほとんどの写真は紀伊半島西岸で撮影した)、外見はそれらと大差ないが、サンマ棒受網漁船は
水上灯しか用いないので区別できる。
サンマは潮の岬まで南下し、そこで棒受網によって漁獲される。ここでは、同時に刺網を使用しながら棒受網
漁業を行うことが特徴的である。
漁場ではゆっくり前進する船から、海面をサーチライトで走査しながらサンマ魚群を探す。海面直下にサンマ
がいると水シブキを上げる。まずその付近で、コの字型に刺網を設置し、少し離れた場所で水上灯を点灯して
魚群を集め、棒受網で漁獲し、帰港前に刺網を揚げる。
No.37 ここのサンマ棒受網漁船としては大型で、探魚のために船橋は2段になっている。船首には海面を走査
するためのサーチライトが見られる。
No.38・No.39 No.39はNo.38の拡大写真である。サンマ棒受網漁船の間に停泊していたので、サンマ棒受網漁船
と考えられる。しかし、構造は他の地方におけるサンマ棒受網漁船と異なるので、網の操作法は異なると考えられる。
サーチライトは船首の先端にあるので、これらの写真には写っていない。右舷後端付近には一対のダビットがあり、
右舷前半にはサイドホーラがある。この構造は、当時にこの港に停泊していた他の漁船にはほとんど見られなかった。
右舷中央には、集ったサンマを前もって設置しておいた網の中に誘導する集魚灯を引
出す竿が見られる。
No.40からNo.44までは、勝浦港に停泊していた小型の棒受網漁船の写真である。種々の構造の船が見られる。
ほとんどの船では、2本の太い竿が斜めに立ててあり、それによって網を扇子状に広げると考えられる。その
一本には水上灯が下げられ、付根付近に網を扱うボールホーラが見られる。また、機関室の前に独特の型をした
ウインチがある。斜めに立っている2本の竹竿はないが、網がついた太い竹竿が左舷のブルワークの内側において
ある船がある。
このように、同じ漁港を根拠にして同じ漁法を使うと考えられるほぼ同じ大きさの船に、全く異なる数通りの
型の装置が見られることは珍しい。
No.45 扱っている漁法は棒受網である。浮子方は孟宗竹で浮かせるようになっているが、網裾を締めるために、
巾着網におけるような環締め装置が見られる。この漁港で撮影した他の写真を調べたが、このような装置は写って
いなかった。
「環締め装置」は巾着網の特徴と考えられている。他の地方において、環締め装置がついた「囲刺網」が見られた。
沿岸漁業では、詳しく調べれば、漁法間の中間型に関するもっと他の例が見られるだろう。
No.47
No.48
No.49
No.50
No.51
No.52
No.53
No.54
No.56
No.57
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棒受網は、網を水中に広げ、その上に撒餌をして魚を集めて漁獲する昼間操業の型と、夜間に灯火を点けて
表層魚を誘引し漁獲する夜間操業の型がある。しかし、前者は歴史的か局地的な重要性しかない。
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[No.18: ft_image_21_11/image037.jpg:
拡大画像から小画像作成のこと]
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