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しかし、浸漬時間が長過ぎると漁獲物の鮮度が低下するばかりでなく、浮延縄では、魚食性の魚類による
食害により、底延縄ではウミホタル等の腐食性動物によるヒレ・眼窩・内臓の食いあらしにより、漁獲物の
商品価値がなくなる。海底付近は表層に比べて流れは弱く、縄はその影響を受けにくいが、それでも多少とも
動いて海底の障害物にかり、漁獲物が落ちるばかりでなく、縄自体が揚がらなくなる。特に、荒天が続くときには、
この影響が大きい。
延縄の短所は、海上における直接の労働に比べて、大きな間接的労働が必要なことである。浮延縄では、
揚げられた縄を整理し、次ぎの操業に備えて縄を繰りなおして餌を付けなければならない。底延縄では、
揚がってくる幹縄には枝縄が巻きつき、深くから引揚げるときや大きな張力がかかるときには、枝縄の
カラミが特に著しい。その際に、傷んだ枝縄を付けかえる等の作業が加わる。この作業を「縄さやめ」と呼ぶ。
この作業は日帰りの沿岸漁業では、主に主婦・引退した漁師・子供等の、漁村における家内補助労働力や
余剰労働力が当てられる。近年では余剰労働力が少なく、利用しにくい。それが延縄の減少した原因の一つである。
都市周辺に残っている漁業では、労働の大部分が船上で行われ、補助労働力がほとんど必要でない漁法が多い。
底曳網が典型的なその例である。
洋上である期間を過ごす延縄―特に底延縄―では、直接揚縄に当たる人数の数倍の人が「縄さやめ」に当たる。
また、船の操業能力は、この能力によって決まる。東シナ海におけるアマダイ延縄では、ある程度の縄が
整理されると、船の能力以下であっても、それだけを投縄する作業パターンが取られる。
延縄のもう一つの短所は、常に十分な餌が必要なことである。時には、餌には普通みられないような
無脊椎動物が用いられ、その補給が決定的な影響を与えることがある。No.8はその例である。延縄では常に
餌不足が問題になり、人工のもので代用にする試みが常に進められるが、いまだ解決を見ていない。
日帰りでない場合には、航海期間中の餌を確保し、餌を漁獲物と分けて蓄えておくために、魚艙の一部を
割かなければならない。
延縄には浮延縄と底延縄がある。浮延縄の場合の作業は時刻に左右されるが、底延縄の場合、特に沖合の場合は、
時刻にあまり左右されない。
浮延縄には、大規模のものとしてマグロ延縄がある。これは別のファイルに示した。(日本海には)
サケ延縄があった。その他にもサバ延縄等局地的なものがあった。現在残っているものにトビウオ延縄がある。
これは、魚食性の魚類を対象とする延縄としては例外的であり、興味深いので、別のファイルに示した。
底延縄の最大のものは北洋におけるギンダラあるいはタラ延縄がある。ギンダラ延縄を別のファイルに示した。
この漁業は関係諸国の200浬経済専管水域の実施にともない消滅した。以前には、底層にすむアブラツノザメを
専門に狙う底延縄があった。しかし、スクワレンやヴィタミンDの合成が進み、この漁業はなくなった。
また、底延縄の変形として、縦延縄と玉縄がある。これらは興味深い漁法なので、別のファイルとした。
これらを除くと、ファイル「延縄」に含まれる情報は、その分布に比べると少ない。
東シナ海におけるアマダイ延縄がある。この船はフグ延縄も行う。以前にはサメ延縄も行った。
このファイルには、日本各地に広がる数多くの延縄を網羅することはできないので、アマダイ延縄を主体とし、
その他に沿岸におけるいくつかの例を加えた。
No.2
No.2は山口県の瀬戸内海側で縄を揚げていた船の写真である。船首の構造を見ると、底曳網漁船であったと
考えられる。1人乗りである。上・前・左側をテントで囲ってあり、海上交通が輻輳する瀬戸内海で操業
しているが、見張りは考えられない。先の写真では、左舷がわで投・揚縄をするが、この船では右舷で縄を揚げる。
底延縄の場合には右舷がわで投・揚縄をする方式が普通である。
No.5
瀬戸内海西部における古い典型的な型の木造漁船で、舷が高く、延縄漁船に適した船型でない。
No.4は、そのラインホーラを示す。地元製らしい。深い底延縄では、時々負荷が特に大きくなるので、
自動車のギアボックスを転用している。自動車の中古部品を使用する習慣は、種々の沿岸漁船において見られる。
底延縄のブイにはガラス玉が用いられていた。これを「ビン玉」と呼ぶ。ブイは海面に浮いているので、
耐圧性は問題にならない。「ビン玉」は吸水性がなく、安価なので、当時には多くの漁法で普通に使われていた。
No.5はその漁具を示す。幹縄は太く、それに比べると枝縄は、はるかに細い。これが底延縄の特徴であり、
漁具を見ただけでも浮延縄か底延縄かが分かる。幹縄は深くから揚げるために大きな負荷に耐えねばならず、
枝縄が海底の障害物にかかると切れるようにしなければならない。延縄の単位を「鉢」と呼ぶ。
この呼び方は使われないときにこの写真が示すように、浅い鉢に入れておかれるためである。
鉢の境目には石をつける。角のない石は海底の障害物にかかりにくい。また、比重があまり大きくないので、
この漁業に適している。この石も障害物にかかると切れやすくなっている。
幹縄はずらしながらコイルして鉢に入れられ、釣針はその縁に結ばれた藁の束に懸けられる。
これは沿岸底延縄における一般的な習慣である。
No.7
No.8
普通は沿岸底延縄でも数時間は浸漬される。しかし、底延縄は着底すると短時間内に魚がかかり、
その後は漁獲は増えない。漁場は浅いし、流れの速い場所に棲む魚の習性を考えると、この浸漬時間で十分だろう。
また、操業時間がこれ以上長引くと、流れに逆らって揚げなければならないし、流されて幹縄が縺れる。
No.6に示すように、両端に十字の先が曲がって尖った細く長い鉄棒の爪が車のようについた1mくらいの
鉄棒がある。これが、この地方のタイ延縄の餌を確保する独特の道具である。
この延縄にはNo.8に示すようなユムシを餌として用いる。この水道の海底には、数本の砂の帯がある。
ユムシはそこに多い。この金具に、自転車のチューブで作った紐を付けてこの部分の海底を曳く。
ゴムが伸びたり縮んだりしながら、この金具は砂地を回転しながら動く。ユムシはその爪に刺さる。
獲れたユムシをNo.8に示す。
No.7はタイ延縄の写真である。幹縄に比べて枝縄は細い。
No.6は機関室より前、No.7は船尾の写真である。ラインホーラは見られない。
No.10
No.11
漁業に使われる機械は、その機能によって次ぎの3通りに大別される。
その1つは、作業の大部分の時間にわたり、ほぼ一定の小さな力と速度で動く単純な構造の機械である。
それがなくても人力によって作業を行っていた。しかし、その導入によって労働は大幅に軽減された。
延縄のラインホーラと刺網のネットホーラが、その例である。
もう一つは、短時間しか作動しないが、大きな力をだす機械である。それがなければ、大きな漁具は扱えない。
船尾式トロールウインチと巾着網におけるネットホーラとパースウインチがその例として揚げられる。
多くの場合、その間に作業の進み方に応じて、速度と出力が変動する機械である。
第3の型はイカ自動釣機とカツオ釣機で代表される。人間の作業を機械が完全に置き換わった機械である。
ここに示す例は、地元で製作された延縄用のラインホーラの写真である。農業用資材を活用している。
No.9はシャフトとベルト駆動方式である。No.11では中古車のギアボックスを活用している。このような
単純な機械で、労働は大幅に軽減された。
No.13
No.14
No.15
No.16
No.12は、この漁船の右舷を、No.13とNo.14は左舷を示す。FRP製であるが、No.19の船首部に示すように、
木造船時代の面影を残している。
船首楼の少し後の右舷にラインホーラがある。縄は垂直に近い方向から揚がってくる。船長は船橋の右端に座り、
ラインホーラから揚げってくる縄の様子を見ながら操船する。そのために、船橋の右側の窓には乗り出して下を
覗けるように風除けの箱がついている。これは、No.12とNo.16で分かりやすい。揚縄作業は船首楼と船橋の
間で行われる。しかし、この作業に直接当たるのは、2人か3人だけである。
その1つは、乗組員の大半は船尾の作業場に座って終日「縄さやめ」と餌付けに当たることである。
ここにおける作業を風波から保護するために、庇が伸びており、ブルワークの上にはキャンパスの
風除けが張られている。
船尾にある設備の特徴は、シュータである。シュータとは船尾に取りつけられた台で、整理し餌を付けられた
縄がその上に載せられる。船の航走に従って幹縄が繰出される。これは日本の漁船ではあまり使われないが、
北米のオヒョウ延縄では普通に使われる。
第3の特徴は、船尾の右舷がわに2台目のラインホーラが設置されていることである。
底延縄の幹縄は、海面にあるブイと数鉢から数十鉢ごとに結ばれる。この縄を「瀬縄」と呼ぶ。
ブイは浮延縄におけるように密でない。したがって、縄が設置されている位置を示す目標にはならない。
瀬縄は、幹縄が海底の障害物にかかって上がらなくなると、それを放して、次ぎの瀬縄から揚げるためである。
普通は水深の1.5倍以上の長さである。
以前には、瀬縄はゆっくりと人力で揚げられていた。この作業を助けるために、ディスクの反対側に、
もう一つ簡単なディスクつけたラインホーラもある。瀬縄を揚げるためにもう1台のラインホーラがつけられた。
これはなくても作業はできる。これは省人化にならないが、労働は軽減された。このラインホーラには、
もう1つの目的がある。底延縄は海底に設置される。幹縄は泥や砂で汚れたまま引揚げられ、ラインホーラの
ディスクの間を通る。幹縄は、スリップすると泥水を流しながらディスクで擦られる。ラインホーラは簡単な
機械であるが、揚縄中に故障することがある。そのときには、後部のラインホーラと首部を付けかえ、
揚縄作業を続けながら、修理される。
船橋から後部まで、機関室の上にあるハシゴを縦に半分に切ったようなもの(No.19にも見られる)は、
延縄船に独特の構造で、「縄さやめ」が終わった鉢を、これにかけるためである。その使い方はNo.25に見られる。
左舷がわには、特別の構造はない。
延縄では、口に釣針がかかった魚は海面からラインホーラまで空中を引揚げられる。立って揚縄作業をする
場合には、その途中で手鈎をでかけられるが、座って作業をする場合には手鈎を使えない。この船では座って
揚縄作業をする。このような作業パターンの割にはこの船の乾舷は高い。(No.19に示すように、
これは甲板が高いためで、ブルワークは低い。)
船橋は低く、船首楼とほぼ同じ高さである。これは風波の強い冬期の東シナ海において甲板で揚縄作業
をする人を風波から保護するためである。夏季には船首楼と船橋の間にテントが張られる。
No.15に示す船では、船橋は著しく前にあり、ラインホーラはその下にある。この構造は、揚縄作業を
する人を風波から保護するためである。しかし、船橋が著しく前にあると、右から風を受けると船首部は風の
圧流を受けて左、すなわち、縄から遠ざかる方向に回頭し、揚縄中の操船には不便である。したがって、
この型の船は、普及しなかった。
No.18
No.19
細長い鉄筋で作らる。海底にかかり、ある程度以上の力がかかると爪が伸びて外れるようになっている。
これでは目方が不足するので、セメントブロックをつけている。
No.24
その針金の部品が、No.24の右側の人が仕立てている鉢の横に見られる。
背景に見られる竹はボンデン用、木片は魚を入れる箱を組みたてる材料である。
No.29
No.30
縄は薄板を丸く曲げて作った鉢に収納されることには、変わりないが、この鉢の構造は変化に富む。
同じ漁協に属し、同じ漁業に従事する船の間でこのように広く使われる道具に変化があるのは珍しい。
一般にこのような補助的な道具は閑漁期の間に手造りされるか、既製品で間に合わせ、好みに応じて
細部を変えられると考えられる。しかし、細部は変化が大きいが、概略大きさと構造には変わりない。
No.28では釣針は鉢の縁に直接懸けられる。すなわち、縁には釣針を懸ける藁束はない。
No.29では鉢の中に曲げた木切れがあり、それに釣針が懸けられる。
No.30では鉢の構造はNo.29におけるものと同じであるが、餌を付けると釣針は縁に懸けられる。
No.32
このような仕立て方が珍しいので収録した。
No.35
No.34にはシュータがあるので、延縄船と考えられるが、後部には漁船には珍しい手摺があり、ラインホーラは
見当たらない。
No.35は同じく玉江浦で撮影した。船尾にはシュータがある。右舷船尾には、電動ラインホーラがある。
小型船では油圧式やシャフトドライブよりも電動の釣機やラインホーラが普通になった。また、1人乗り
の漁船では、以前は機関室の前にラインホーラを取りつけていたが、右舷後端につける船が多くなった。
このような点では進歩しているが、自然の石が使われている。延縄の錘としては、角が無く比重が大きく
ない石は適しているのだろう。
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延縄は、少ない経費で広い範囲をカバーできる長所があり、最も広く用いられている漁法の1つである。
一本の幹縄に数十本から千本以上の釣針をつけて漁獲する。人間が常に見張っている一本釣(手釣・竿釣)は、
1本から数本の釣針を用い、短時間における釣針1本ずつの効率に重点を置く。延縄は人間が見張らないので、
釣針1本の効率は低いが、それを釣針の本数と浸漬時間の長さで補う。一本釣と同様に、ある範囲内の大きさの
魚を選択的に漁獲し、浸漬時間が短かれば、鮮度が高い魚を供給できる長所がある。
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No.4
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この船における作業と構造の特徴は船尾にある。これは次ぎの3点に絞られる。 
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